コラム:咲 阿知賀編その5〜「話の都合」と言われればそれまで?のことを真面目に考えてみる〜 ※使用している画像について 今回は既に単行本化されている範囲では本編・阿知賀編共に単行本から撮ってきました。 2013年1月上旬の段階で未収録のもの、あるいは見開きのページなど私の環境では撮りにくいものについては ヤングガンガンまたはガンガンの雑誌から引用しています。 |
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久しぶりのコラム5回目 もう少しこまめにやればいいんですけどね。すぐ息切れするから私・・・ 今回は阿知賀編の展開上でふと浮かんだ疑問について 本編・阿知賀編を読み直して自分なりに答えを出してみようと言う話です。 「今さらそんなこと?」というのもあれば「いやそりゃちがうだろ」というのもあると思います。 そこはそれ、私はこう思いました!ということでして これが正解だなどとおこがましいことを言うつもりはもちろんありませんよー 先にお題を紹介しますと、今回はこの4つです。
例によって例のごとく、付き合ってくださるのであれば以下へどうぞ、お願いします。
第1話、穏乃が久しぶりに見た和はテレビで、インターミドル個人戦優勝を飾った瞬間でした。 かつて一緒に遊び、麻雀を打っていた知り合いの活躍に穏乃は目を奪われ、 忘れかけていた麻雀への熱意を取り戻し、麻雀部復活に向けて走り始めます。 それにしてもまだ和がいた頃に「なんかあったら連絡してほしいな」と言っていたにも関わらず どうして穏乃は和の連絡先を知らなかったのでしょうか? もちろん第一の理由はクラスが別々になったことをきっかけに疎遠になってしまったということなんですが もう一つの理由として、おそらく「当時の和は携帯電話を持っていなかった」のだと思います。
和の携帯(スマートフォン)については、本編の方でつい最近出てきました。
もしかすると、和はつい最近携帯を持ったばかりなのではないでしょうか?
これらのことから、全国大会に進む=東京に遠征するにあたり、購入した公算が高いと思えます。 実際の統計(※内閣府:平成23年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」より)によると 小中高生の携帯電話所有率は、小学生が20%ちょっと、およそ4、5人に1人程度。中学で40〜50%。 高校生になると一気に95%以上にまで伸び、持っているのが普通の感覚になります。 しかし、小学生の段階では持っている方がずっと少ないのです。 このことから、和が高校まで携帯を持っていなかったとしても、別に不自然なことではありませんね。 では持っていない方が普通なのだとしたら 逆に、小中では所有率の低い携帯をなぜ穏乃・憧・玄は揃って持っていたのでしょうか? 高校生くらいになると友達同士で連絡を取り合うようになり、携帯は必需品になりますが(だから所有率が一気に跳ね上がる) 小学生の頃に携帯を持つとしたら、その目的は友達ではなく、親との連絡のためです。 最近では、安全確認などを理由に子どもに携帯を持たせる家庭も増えてきているようですが、 それに加えて、穏乃・憧・玄の3人に共通すること、それは家が自営業だということです。 穏乃は土産物屋、憧は神社、玄は旅館です。
このような家業の手伝いおよび家との連絡のため、3人は携帯を持った、というより親から渡されたのだと思います。
以上、彼女たちの生活環境、加えて小中学生の携帯所有率を考えると、 和だけが携帯を持っていなかったのだとしても、それほどおかしなことではないと思います。 せっかく持っているのだからと呼び出しに使うことはあっても、携帯を仲立ちにした関係ではなかったわけですね。 第一、おしゃべりやメールを楽しむ穏乃って想像できないですし。それを言うなら玄もだけど。
もし清澄が負けていれば?阿知賀が奈良県を勝ち上がったところで、和とは全国大会で会えません。 もちろんその逆も然りで、清澄が勝っても、阿知賀が晩成に負けてしまえばそこでジ・エンドです。 可能性を高める上でも、たとえどちらかが団体で負けても個人なら、と 個人戦出場に賭ける目を残しておくべきだったのでは?と考えてもおかしくないところですよね。 和と面識のない宥姉や灼はともかく、どうして誰も個人戦を目指さなかったのでしょう? すっぱり言ってしまえば、そこまで描写する余裕がないのと 後々に出てくる個人戦出場者との特訓の道を開くためなんですが、 (団体戦は団体戦、個人戦は個人戦。同じトーナメントの出場者同士で練習試合をすることができないルールがある) 話の都合で片づけないで、もうちょっと突き詰めて考えてみました。 ポイントはここ。阿知賀が晩成を破り、県代表を決めた頃 ほぼ同時期に行われていた長野県予選を清澄が勝ち上がったことを新聞やネットで穏乃たちは知ります。 高校生の地方大会の結果が奈良の新聞にも載っていると言うのは それだけこの世界における麻雀への注目度の高さを物語っています。 まして、インターミドルのチャンピオンである和が含まれ、なおかつ昨年全国ベスト8の龍門渕を破っての初出場 きっと大きく取り上げられたことでしょう。 しかし、そこで清澄について、憧が一言
聞いたことがない。 そう、阿知賀の子たちは、和が清澄に行ったことを知らなかったのです。 (となれば、もちろん和が穏乃・憧・玄のいずれとも重ならない副将であることも。 もっとも、オーダーについては、部長が部員に発表したのも県予選当日になってのことなので、これはわかるはずもないです) 何故知らなかった?と言うより、知る由もなかったというのが正しいでしょうか。 和が清澄に行ったことを事前に知ることができるとしたら、その方法は A「和から聞く」 B「マスコミ等の情報で知る」 この2つです。 言うまでもなく、和の連絡先を知らないのだから、Aは無理です。 したがってBしかないわけですが、するとマスコミは和の進学先に関する情報を流してくれていたでしょうか?
そもそも実際の、たとえば野球などでもそうですが 高校生はまだしも、中学生の進学先レベルでは、たとえチャンピオンであってもマスコミ的にはそう注目されないものでしょう。 西田さんでさえ書いていないのであれば、他の誰も手がけていないと言い切ってしまっても差し支えないと思います。 穏乃たちは和の進学先を知らなかった。では、それなら和はどんな学校に進んだと思うでしょうか? 「和は個人戦で優勝するくらい強くなった!」ならば 「その和ならきっと麻雀の強い学校に行っているはずだ!」
この辺の和の進路に関する穏乃たちの推測が阿知賀が個人戦にエントリーしなかった理由、その一つだと思います。 実際の和の選択とはズレがあったので、薄氷の可能性ということになってしまいましたが、 推測通りに、中学王者が行くだけの強豪校に進んでいたのであれば、もっと違う展望になっていたでしょう。
さて、理由はもう一つあります。シンプルかつ重大な理由で エントリーしたところで阿知賀5人に個人戦を勝ち抜けるだけの力量があるか?ということです。 このへん、清澄(竹井部長)と阿知賀(赤土さん)のプランを見ると、その育成方針に違いが見えてきます。
なぜ育成方針に違いがあるのかというと、もちろんそれぞれの志向・判断の違いからなのですが、 「弱点の克服」「長所を伸ばす」 一概には言い切れませんが、特訓として上級者向けなのは前者で、後者はどちらかと言えば初心者向けです。 清澄の場合、和はインターミドルで優勝しており、実績は十分。咲はその和を上回るほどの潜在能力を示しました。 底上げを図るまでもなく、相当に強いのです。であればより強くするためにはスキを少なくすることが課題になってきます。 また、和の存在は、全国に進めるだけのレベルを図る、一種の「ものさし」としての意味も持っていたことでしょう。
点を取られるが自分でも取る、逆にあまり打点は上がらないけど守り切って後につなげる。 団体戦ならこれでいいのですが、自力で戦う個人戦ではそうはいきません。 個人戦に必要なのは自分で稼ぎ、かつ失点も抑える、オールマイティ的な実力です。 もちろん長所を伸ばし、弱点も克服する。その両立が可能であればそれに越したことはありません。 が、「角を矯めて牛を殺す」なんていうことわざもありますが 弱点を補強しようとして、かえって中途半端な仕上がりなってしまうおそれがあることも否めません。 くどいようですが、阿知賀の部員には実績がありません。 唯一かつ最大の武器は、かつて晩成を下した阿知賀のレジェンド・赤土晴絵がいることです。
実際のところ、個人戦に挑んでいたらどうなっていたか? もちろんそれはやってみなければわからないことですし、 特に県予選で稼ぎ頭だった玄や、予選から全国準決勝に至るまで全てプラスという安定ぶりを示している宥姉なら 県大会レベルは何とかなった可能性は高いと思います。 しかし、それはまさにフタを開けてみた後になってからわかる結果論で 準備段階にあたって、団体戦・個人戦も成績を残そうと考えるのはかなり困難です。 第一、肝心なこととして、個人戦代表は各県3人 どうがんばっても、全員が勝ち抜くのは不可能です。
そもそも部活動なんだからどこにも顧問がいないとおかしいだろ!というそれ以前のつっこみはとりあえずさて置いて 全国を目指す各校の麻雀部。部のいくつかでは、部員を指導する立場の大人の存在が確認できます。
この中で最近出てきたばかりの善野さんはともかくとして、 もう一つどういう役回りなのかが見えてきていない気がするのが 関西最強千里山を率いる愛宕監督ではないでしょうか。 いや、何もやっていないみたいな言い方をするのは語弊があると思います。 全国大会2回戦への準備として、レギュラーが研究するための1回戦映像と牌譜を用意したのは監督ですし (全国大会と県大会では環境がまったく違うであろうとはいえ、 コラム4で挙げたように、風越が清澄と鶴賀の牌譜をまとめるのに苦労していたことを踏まえると、 この仕事の速さはさすがです) バス4台、つまり部員・関係者合わせておよそ150人はいるであろう大所帯から 5人のレギュラーを選抜し、オーダーを組んだのも監督であるはずです。
現時点でははっきり明言されてはいませんが、その名前と顔立ちが示すように 南大阪の代表校・姫松の中心選手である愛宕姉妹の母もしくは親戚であるはずの雅枝さん (愛宕姉妹と船Qが従姉妹で、雅枝さんと船Qがおばと姪の関係であることは各々の台詞からわかります。 ただ雅枝さんと愛宕姉妹が親戚ではあっても親子だとは今のところ断言されていないかなと 限りなく100%に近い確率で親子だとは思いますが) 本編登場の、しかも強豪キャラクターと血縁者と言う、一種の「ネームバリュー」があるにも関わらず 雅枝さんの指導者としての働きぶりはそれほど前面には出てきていません。これはどういうことか? これまた単に描かれていないだけと片づけてしまえばそれまでですが、ちょっと考えてみたいと思います。 では、ここで指導者の仕事にどんなものがあるか、他校の指導者の様子から振り返ってみましょう。 第一に、まずあがるのはやはり「部員の強化」でしょう
呼ぶのではなく、自ら行くというケースだと、 赤土さんは全国の予選2位校と連絡を取って、毎週のように遠征に連れて行きましたし、 久保さんも藤田プロと提携して、長野決勝に進んだ4校を集めて合宿をしたりしました。 第二に、「試合に向けて対戦相手の研究と対策の指南」
第三に、「部員のスカウト」
これらのことをもちろん愛宕監督がやっていなかったとは言いません(むしろやってないとは思えない) ただ「自身で」やっていた描写が確認できないのと、少なくとも第二については誰が見ても明らかに船Q主導です。 第三については、中学から実績があったらしい泉やセーラは千里山への推薦を受けたものと思いますが、 招くにしても、名門であるならばこれは主にスカウト担当の仕事でしょう(もちろん意見は聞かれたはずですが) 部員が少ない(宮守)とかオフシーズンがある(実業団リーグ)→動きやすい状況・時期がある という条件があるからとはいえ、監督自ら赴いて誘いをかけている熊倉さんの方が珍しいと思います。 ならば愛宕監督の仕事は何か?それは以降に挙げる3つのことではないでしょうか。 第四、「指導者的存在の部員を育てる」 第一に関係する「外部の人を招いて特訓する」はともかく、「自分で打つ」ということについて 阿知賀や宮守はできて、千里山でできない理由は何か? 単刀直入に言って、部員数の問題です。 阿知賀・宮守ともに5人しかいません。部員=レギュラーですから、つきっきりで面倒を見ることが成長への最善策です。 しかし千里山は100人を超えるであろう大所帯です。全員を見られるわけがありません。 風越・新道寺・姫松も千里山ほどではないにしても、強豪校としてそれぞれかなりの大人数を抱えているでしょう。(風越は80人) OGやプロを呼ぶのは、より実践的であること、呼べるだけの人脈があること、のみならず そういう機会を持たないと指導者自らのコーチングでは限界があるということもあるかと思います。 監督では全員を見きれない。ならばどうするか? 2軍・3軍とレベルに応じたグループを作ることや、指導できる人を増やすこと。 コーチ陣を拡充できるならそれも良策ですが、部員が教わるだけでなく、互いに学びあう環境にすることも大切です。 特にレギュラー陣においては、野球で言えば「グラウンド上の第二の監督」とも呼ばれるキャッチャー サッカーなら「司令塔」にあたる部員を育成し、その部員に対戦校の研究と対策を指揮させる。 千里山の場合、今さら言うまでもなく、船Qのことです。 船Qの場合、どうしてもついて回ってしまう血縁関係、「監督の姪だから選ばれた」などという声を黙らせるためにも、 レギュラーに必要な存在として鍛えたのだと思います。
今はレギュラーでも、いずれ学生たちは卒業していきます。 OGとして、プロとして、自分自身の麻雀人生はもちろん、後輩を指導する時にもその経験はきっと生きてくるでしょう。 長い目で見て、それは学校にとってもプラスになります。 伝統を持つ強豪校だからこそ、その年だけに限らない長期的な見通しを持ち、 このような「監督候補生」を育てておくことは大いに意義があることなのだと思います。 続いて第五、「マスコミ対応」 これは本編の方で示唆されたのでは、と私は思っています。
倒れた子というのはもちろん怜のことです。 取材しろと言われたが不謹慎なのでという西田さんのもっともな良識と 一方で、受けた指示を自分の判断で放棄してしまう仕事人としての不徹底さ・・・はとりあえず置いといて
試合の真っ最中に控室はおろか会場からも離れたのはただ監督者責任として、ではなかったのでしょう。 こういう外部の声から選手を守るために、自ら動かなければいけなかったのだと思います。
そして、最後に第六、これを外すわけにはいきません。「最終責任者としての監督」です。
ところがこれ、たとえば泉が示唆したような「後援会の人」など 作品世界の千里山の関係者に受け入れてもらえるかと言うと、現段階では必ずしもそうとは言い切れないのです。
千里山は去年のインターハイでは四位、現在の全国ランキングでは二位。 優勝、最低でも決勝進出を求められているチームです。 これで、今の準決勝で敗退するようなことがあったら大変なことです。 何せ、非効率なことをやった挙句に、去年よりも成績を落としたということになってしまうのですから・・・ 強豪校には強豪校としてのプライドやスタンス、「しがらみ」があります。 このへん、スラムダンクの豊玉高校を思い出していただくとわかりやすいかもしれません(あれも大阪代表でしたね、そう言えば) 勝利を求められているチームは、勝利を最優先で考えなくてはいけません。 また、チームにとってプラスになることだとしても、今までのスタンスはそうそう変えられません。 変えて結果よくなれば称賛されますが、良くならなければ、むしろ落とそうものなら、あっという間に批判の対象になります。 今までのやり方で実績を積み上げたチームであればあるほど、その手法を変えるのは難しいのです。 そこで重要になってくるのが監督しての愛宕さんの存在です。 レギュラーたちが自分でやりたいと言いだしたことでも、認めた以上、最終的な責任は愛宕監督にあります。 高校生に結果如何を問うのは酷ですから、称賛はともかく、批判は真っ先に自分が受ける覚悟がなくてはなりません。
・・・まとめると、現時点では愛宕監督は前面に出てくるようなタイプの監督ではありません。 しかし、部員にできることは部員にやらせる、自主性を重んじている監督であるとも言えると思います。
まーこんな推測にとどまらず、ここは一つ、監督が「いかにも」な仕事ぶりを見せてくれれば、 それが一番すっきりするんですけどね。 そういうことで、どうかよろしく、雅枝さん。
準決勝先鋒戦が終わったあと、次鋒では宥姉、中堅では憧が卓に向かいます。 それぞれ白糸台対策として、宥姉は「弘世菫の狙いのクセ」、 憧は「渋谷尭深のハーベストタイムの傾向」を、事前に赤土さんから教わっていました。 また、副将の灼にはピン牌狙いの打ち筋がある程度見抜かれていることを想定した上で 清澄の竹井部長のような悪待ちで意表を突く方法を学ばせていたようです。
しかし、それだけいろいろ講じるアイデアを持っているのなら どうして先鋒戦だけはろくに口出ししなかったのか?とは思わないでしょうか。 次鋒戦以降での対策が有効であればあるほど、先鋒戦での無策ぶりが際立ってきます。 おまけにこの先鋒戦でアニメが一旦終わってしまったこともあって、余計赤土さんが指導者として力量不足に見え、 後付けみたいに急に仕事を始めたように受け取られてしまっているのでは、とも感じます。 赤土さんは今年顧問になったばかりであり、始めから優れた指導力を求めるのはそもそも酷です。 顧問を引き受けた理由も、10年前のインハイ以来抱えている、トラウマのようなものを克服するためでしたから、 麻雀に携わる者として、赤土さんもまだまだ発展途上の人です。 ですから対策しきれていなかったとしても、やむをえないところもあるでしょう。 しかし、玄に対して特に作戦を授けなかった理由、これは明確にあると思います。 まず根本的なこととして、ドラを抱えて手が縛られ気味の玄に、器用な作戦はできません。 そして、全国2回戦の戦前まではそれでもよかったのです。 奈良県予選では常勝・晩成高校を凌ぎ、全国1回戦でも失点を軽く取り返す勢いで圧倒しました。 ドラを大事にすることで勝ち上がってきた玄に あえて今の打ち筋とは異なる選択肢を持たせる必要はありませんでした。 2回戦で怜とぶつかるまでは。
その後、長野の強豪校や個人戦出場者と特訓して、少しは防御力も上がったんじゃないかと思いますが、 (以前のコラムでも書きましたが、カンドラで手詰まりになった−10200が痛いものの それを除くとあとは−1000と−1300だけ。 前後半全て合わせてもロンによる振り込みは−12500とそれほど悪い結果でもありません。 もっとも照はやたらとツモ和了りが多いので、狙うまでもなかったとも言えますが 少なくとも3位とさえ約3万点離され、一人沈みだった2回戦よりはだいぶマシです) ドラを抱え込むことが、良くも悪くも玄の根幹なので ドラをどうするか、端的に言えば、「いざという時にはドラを切ることも考慮しろ」と言うのか その辺が、事前に可能なアドバイスであろうと思います。
しかし、そんなに甘くはありません。 コラム4でも触れましたが、数局打ったくらいで戻ってくるほど簡単な話ではないので 短期決戦のトーナメントで回復のために長時間を食われるのはかなりの痛手です。 第一、対局に臨む前の玄にドラを切ることが少しでも頭にあったのならば、
確かに玄がドラを切ったことは照にとって予想外で、これで猛威を振るっていた手がいったん止まりました。 しかし、肝心なのは照の意表をついたのは「ドラを切った」ことそのものではありません。 「照が予想だにしていなかったことに直面したため」であり、その手段がドラ切りであったということなのです。 前半戦東一局に「鏡」を使って観察したところ 阿知賀の松実玄からはドラが出ないと判断した・・・なのにドラが出たから手が止まった。 「玄自身にも当初ドラを切る意志はなかった」 ドラ切りが意表をつくための、これは絶対の前提条件です。 もし、少しでも「いざという時には切ることも選択しろ」という考えが念頭にあったのならば 鏡で見抜かれてしまい、成立しないのです。 もちろんこれはドラに限ったことではありません。 照の特徴である、連続和了や弱点?かもしれない打点制限。それらへの分析や対策、全てに対してあてはまることです。
以上のことから、準決勝先鋒戦で特に作戦が立てられていなかった理由はただ一つ、単純明快 チャンピオン宮永照を前にしては「立てるだけ無駄」 これに尽きると思います。・・・って自分で書いといてなんですが、どんだけやねん。 ところで、ドラを切ったことでドラが集まる能力を失ってしまった玄に対して 赤土さんが「ドラ復活の儀式」と称して、ロングラン特訓を始めています。 ここまで書いてきたように、「ドラを切れとは言えないし言っても意味がない」が、ドラを切ることは「ありうる」 照の鏡でも読めなかったほどドラへのこだわりの強い玄について、 この展開を予想できたのは、昔から玄を知る赤土さんならではでしょうし、 そういう状況を見越したうえでの、作戦を立てられない代わりともいえる、玄のための赤土さんの準備だと思います。 この特訓を通して、玄の手にドラを呼び戻すとともに 玄の基礎雀力を上げることを狙いとしているようです。 この特訓、玄にとって、ひょっとしたら今までのどの対戦よりも密度の濃い練習になるかもしれません。 何故かと言うと、「2」で書きましたが 赤土さんの練習方針は、部員たちの長所を伸ばすことに主眼が置かれていました。 玄の場合、ドラが集まる打ち筋を生かした練習を繰り返し、 奈良王者の晩成や全国に進んだ各県代表とも渡り合えるくらいの火力を持ちましたが 必然的に「守りは薄い」という弱点は残り、全国屈指の強豪校エースには太刀打ちできませんでした。 ドラを切った玄に本来の長所であるドラは集まりません。 よって今行っている特訓は、長所を伸ばすのではなく、弱点を補強する、 ネット麻雀に向かった時の咲のような、これまで味わったことのない経験をもたらしてくれるのではないかと思います。
基礎雀力において、玄より赤土さんの方が優れていることはもちろん ドラが集まり、しかも切ったらもう来ない、なんてこともない。 ドラを自由自在に使って打てる、まさに玄にとって理想的とも言うべき打ち筋の相手が目の前にいるのです。 先鋒戦が終わってから次鋒→中堅→副将と、穏乃の大将戦開始までに6時間前後が経過していますが、 この間の数少ない玄のコマはほとんど涙目です。 そりゃ勝てません。普段の状態であっても勝ち目のない、「自分より遥かに強い自分」と向き合っているのですから。 ドラは来ないわ、勝てないわ。へこむ要素しかない状態ですが、 ドラなしで自分はどう戦うか、ドラを手に入れた赤土さんはどう打ってくるのか、学ぶことはたくさんあるはずです。 この特訓が決勝で生かされるのか、そもそも決勝に行けるのかどうか自体が先行き不透明ですが 今までよりもさらに強くなる可能性は秘めていると思いますよ。
またなんかネジが一本抜けたっぽい 以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。 まあ、占いじゃないですけど、当たるも八卦当たらぬも八卦といったところです。 関連記事:咲 阿知賀編その1〜憧・穏乃・玄と「阿知賀こども麻雀クラブ」の子どもたち〜 :咲 阿知賀編その2〜漫画版とアニメ版 2人の玄ちゃん〜 :咲 阿知賀編その3〜怜は一体何を「改変完了」したのか?〜 :咲 阿知賀編その4〜仮説・ドラにまつわる玄ちゃんの記憶〜 :咲 阿知賀編その6〜場面と台詞から類推してみると・・・〜 :咲 阿知賀編その7〜いろいろなところにある「きっかけ」〜 :咲 阿知賀編寄り道〜一ヶ月遅れの探訪レポート〜 :咲 阿知賀編スタンプラリー〜歩いてきました吉野山〜 :咲 阿知賀編その8〜近いようで遠い、「あの人」への距離〜 :咲 阿知賀編キャラクター紹介〜『阿知賀こども麻雀クラブ!』〜 :咲 阿知賀編ヒストリー〜年表(阿知賀女子学院のあゆみ)〜 |