コラム:咲 阿知賀編その2〜漫画版とアニメ版 2人の玄ちゃん〜 ※使用している画像について カラー画像は主にアニメ版「咲阿知賀編」(テレビ放送時のもの) 白黒画像は「月刊少年ガンガン」連載、五十嵐あぐり先生作画による漫画版(雑誌掲載時のもの)から引用しています。 |
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ここを開いてくださった方には今さら言うまでもないことかとは思いますが 咲阿知賀編は、2012年4月〜7月にかけてアニメ化されました。
で、この記事は主に玄ちゃんについて取り上げていくわけですが 先に結論から言うと、私はアニメ版よりも漫画版玄ちゃんの方が好きです。 ここから先、特に「ここが」と思ったところを、またしてもダダ長く書き連ねていく内容になりますので 万が一の興味と、付き合ってやる暇があれば以下も続けてお願いします。 2012年4月、アニメスタート。第一話のタイトルは「邂逅」
大体漫画版で見たのと同じですが、やっぱり色や動きがつくとより鮮やかで生き生きとしていますね。 滑り出しは上々だったと思います。 作画のレベルも高いと思いましたし、これからどうなるんだろうと期待させてくれるいい演出でした。 ・・・が、 一方その頃の、「これからこうなった」漫画版の玄ちゃん・・・ こんな状態
おおぅ・・・ 先月号で、焼き鳥(一回も和了れてないこと)状態ながら 照の弱点?かもしれない「打点制限」に気づいて もう少しがんばってみるって、気合を入れなおしたところだったんですけどね。 反撃を試みる隙もなく、痛い目見てるのは玄ちゃんの方でしたとさ。 この展開でわかったのは「カンでドラになったばかりの牌が、ドラになる前から既に玄の元に集まってきている」ということで 考えようによっては、強力な武器になると思うのですが・・・ (ドラ指定でもないのに玄の手元に複数来る牌は、カンなりリーチなりで後々にドラになる可能性があり それを見越して手を作ることができる。しかも現行ルールでは1種類につき1枚か2枚しかない赤ドラと違って、 通常牌なら最大で4枚あり、それだけで役を作るきっかけになる) とりあえずそんな先のことより、今ここにある展開ではどうにもならず。 関西でのアニメ第1話放送が4月14日。これが掲載された5月号の発売日が4月12日 なもんで私はアニメ1話よりも前にこれを見ました。 どれだけ1話が期待を感じさせるものであったとしても、 行きつく先がこれなのがわかっていましたので・・・いやな予感しかしなかったです。 いや、1話はそれ自体は文句のつけようもなく良かったと思うんですよ。 でも、放送時期を考えると・・・アニメ、このへんがクライマックスなんだよねぇ・・・? とりあえず精神ズタズタになって、「もう麻雀やめる・・・っ」なんて言わなければなんでもいいや・・・ のっけから既にそんなぼやきモード この時期のぼやきといえば、もう一つ。同5月号の付録ポスター
(12話で収まらなくて+3話ってするくらいだったら、 もうちょっと時期置いて、スケジュールしっかり固めてからスタートさせた方がよかったんじゃないでしょうか・・・) まあ、そんな付録という本筋からそれた傍流のぼやきは置いといて
しかし、それでも漫画版の方がと思うのは もちろんアニメよりも先に漫画の方を読んできたからと言うのもありますが・・・主には表情の違いです。 特に気になった例として、アニメ7話の後半。 滑り込みで2位通過、準決勝進出を決めてお祝いをする場面があります。
この流れ自体は漫画版もアニメ版も同じなのですが。 ところがこの場面、漫画版で見ると実は玄だけ笑っていません。
あと、描写の上で五十嵐先生が意図したか実際のところはわかりませんが、さらに付け加えて言うと、 ●5人の輪には加わっているものの、1人だけ「わいわい」の外にいる ●厳密には傍らの電灯が作り出したものとはいえ、1人背後に影がかかっている ●そして無言 といった様子がこのコマから見てとれます。みんなの喜びに水を差さない程度に、少し和気あいあいから外れています。 赤土さんにたしなめられた大きな理由は、千里山に9万点差をつけられたこと。 その9万点のうち実に9割、8万3000点までが玄が対局した先鋒の結果で生じています。 後半の千里山が守りに入ったゆえだとしても、玄以外の4人はそれなりに渡り合っていたのです。 大差の理由はひとえに玄にあり、何とか2回戦を突破できたのはみんなのおかげで、ここまで苦戦したのは自分のせい。 そう思えば、とても手放しでは喜べないのが当然だと思います。
・・・という流れに繋がっていくのだと思います。 たった1コマの描写であり、考えすぎと言われればそれまでですが、 後半における玄の、それこそいいところなしの心境を振り返る上で わずかでもとても大事な最初の1コマだったのではないかと思います。 これを省かれてしまったのは、私には残念でなりませんでした。 平たく言うと、「あれ、なんで一緒になってはしゃいでるの?」とアニメ見ていて思ってしまいました、ここ。 二回戦中盤で憧が「あとはあたしらが取り返せばいいだけだ」と言って一致団結したように、 誰かが取られても気にせずみんなで取り戻す、阿知賀の仲の良さを見せたかったのかとは思います。 でも、この後の準決勝で「またみんなに迷惑かけちゃう」という言葉がしきりに頭をよぎっているように、 仲が良いからこそ自分の失敗を気にする子だと思うのですが・・・ そして終盤へ。漫画で見ててもしんどかったけど、アニメで改めて見るとなおしんどい。 他の地域でも似たようなものらしいですが、こっちで放送してるのが深夜2時半頃からなんですよ。 次の日が日曜日なだけよっぽどマシなんですが。 11話が終わった段階で漫画版に追いついてしまったので これどうなるんだろう、と思いながら、とりあえず外野の声はシャットアウトして (東京の1週間遅れで放送してるため、ネット等を見ると、もう見た後の人の話で先の展開がわかってしまうので) アニメ版12話に臨みました。 いろんな内容が詰まった話(というか1話に入れるにしては詰め込みすぎじゃなかろうか)ですが この記事は玄についての話なので、今回はその辺だけに絞っておきます。 「ここで来るんか・・・阿知賀・・・松実玄!」 トリプル(3巡先)を見た怜が、今まで目立つ動きのなかった玄が何かを仕掛けることを予見します。 その動き、つまりは今まで玄がかたくなに持っていたドラをついに切ってリーチをかけること。
その前のお母さんとの思い出を振り返る回想も含め、よかったです。よかったのですが・・・ ただ、この展開を見た時漠然とした程度でしたが、何かしっくりこないものを感じました。 深夜の放送まで意地で起きてて、半分頭がぼんやりしてましたし、 それより何より、ここまでいいところがなかった玄が最後の最後で見せてくれたことに とりあえずはほっとしたというのもあります。だからあくまで漠然とした程度でしたが 自分の中ではっきりしたのは、同じ場面を数日後の漫画版で見た時でした。 そしてよくぞ描いてくださったと思いました。 (ただし、途中経過の牌の書き込みには明らかにおかしい場面があるので、そこは単行本作業の時に直してあげてください) 対局に関して、展開そのものはアニメと同じです。 11話のラストで「ここで来るんか・・・」までやっていますので トリプルで先を見た怜の行動、意を決してドラ切りリーチをかける玄→照直撃で先鋒戦終了という流れになります。 展開は一緒です。キャラクターの台詞も同じです。 が、先鋒戦を見届けた赤土先生が心の中で玄を称える一方、肝心の玄自身は
何とか焼き鳥は脱したけど、やっぱり削られてしまったこと とても手放しで喜べるような戦いぶりではなかったこと 何より、亡くなったお母さんとの思い出とも言うべきドラを手放してしまったこと その上そうすることで、今後当面自分の手元にドラが戻ってこないこともわかっていました。 実際リーチして和了ったにも関わらず、加点チャンスとなる裏ドラが乗らなかったのですから。 一矢報いるためとはいえ、今までの自分といったんお別れせざるをえなくなった玄 安堵よりも切なさや不安の方が強く来てしまったのでしょう。 それでも惨敗だった2回戦よりは多く点を残せたのが唯一の救いでした。
満面の笑み、なんてとんでもない。 暗かったり泣いたりしてばかりだったから、せめて最後はと笑顔を作っていたのです。 この時の玄は心から笑ってなどいなかったのです。
私としては、漫画版12話を「この前アニメで見たところと同じ」と一言で断じてしまわれるのは忍びないです。
しかし穏乃は山に遊びに行っていていないし、 憧は進学した中学で新しい友だちと雀卓囲んで談笑してるしで声をかけられず・・・
このビッグガンガンに掲載された阿知賀の番外編。 それほど長い話ではありませんし、今後の展開に大きな意味があるのかもまだわかりません。 でも、私としてはただただ、この話が掲載されたその時期が嬉しかったです。 上記の通り、玄にとっては他の連載・放送展開が非常に辛い時期でしたので・・・ 久しぶりに優しくて健気で、しかしどこか一本頭のネジが抜けている気のするぽんやりとした玄ちゃんを見ることができました。 うん、これでまだしばらく辛い時期が続いても頑張れると思いましたね、いやホントに。 絵柄には好みがあると思いますし とりわけ原作者である小林立先生のデザインに近いのは間違いなくアニメの方です。 千里山を筆頭とする他校の描写・演出に力が入っているのもアニメです。 (特に劔谷はアニメで相当の掘り下げがなされており、アニメを見てから漫画を読むと、だいぶ物足りなく感じると思います) それに麻雀物語らしく、対局場面をより充実させて作られていたのはとても大きかったです。 (これがないと、12話の怜の「改変完了」について、説明がしにくいです) アニメにはアニメならではの良さがありました。
とにもかくにも準決勝の先鋒戦は終了しました。 ここで負ければ当然終わりですし、仮に決勝進出を決めたとしても その先は咲本編で描かれるのが筋ですから、 阿知賀編の公式戦における玄の出番は事実上終わったと言っていいでしょう。 決勝に行ったところで、あえなく弾かれる公算は少なくないですし、 大して見せ場もなくこのままフェードアウトしてしまう可能性も大いにあります。 皮肉じゃないですけど、「竜頭蛇尾」もいいところの結果で終わるかもしれません。 それでも私はドラゴンロードと呼ばれて無垢な勢いで快走した当時より さんざんに苦汁を味わった今の玄の方がより好きです。 もちろん単純に見ていて楽しいのは、「彼女は阿知賀のドラゴンロードだ!」なんですが 勝つ喜びも、負かされる悔しさも、どちらも深く思い知った今の方がもっと応援したくなりました。 とりあえず一つ山は越えたものの、課題はまだ残されています。 これを乗り越えられるのか、それともやっぱりだめなのか。 どちらにせよ一通りのことが終わった暁には、すっきりと晴れやかな顔を見せてほしいです。
また見られる時があるかなぁ 以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。 こんな駄文に最後まで付き合ってくださって、本当に感謝しております。 関連記事:咲 阿知賀編その1〜憧・穏乃・玄と「阿知賀こども麻雀クラブ」の子どもたち〜 :咲 阿知賀編その3〜怜は一体何を「改変完了」したのか?〜 :咲 阿知賀編その4〜仮説・ドラにまつわる玄ちゃんの記憶〜 :咲 阿知賀編その5〜「話の都合」と言われればそれまで?のことを真面目に考えてみる〜 :咲 阿知賀編その6〜場面と台詞から類推してみると・・・〜 :咲 阿知賀編その7〜いろいろなところにある「きっかけ」〜 :咲 阿知賀編寄り道〜一ヶ月遅れの探訪レポート〜 :咲 阿知賀編スタンプラリー〜歩いてきました吉野山〜 :咲 阿知賀編その8〜近いようで遠い、「あの人」への距離〜 :咲 阿知賀編キャラクター紹介〜『阿知賀こども麻雀クラブ!』〜 :咲 阿知賀編ヒストリー〜年表(阿知賀女子学院のあゆみ)〜 |