漫画・アニメ共に先鋒戦終了から1ヶ月以上も経って、こんなド辺鄙サイトで書かなくても 既にどこかで書かれてるんじゃないかと思わなくもないんですが まあ、自分が書きたいだけなので、あえて書いてみようと思います。 |
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コラム:咲 阿知賀編その3〜怜は一体何を「改変完了」したのか?〜 ※使用している画像について カラー画像は全てアニメ版「咲阿知賀編」(テレビ放送時のもの) 白黒画像は「月刊少年ガンガン」連載、五十嵐あぐり先生作画による漫画版(雑誌掲載時のもの)から引用しています。 |
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※のっけから2012年8月現在で最新話のネタバレが一部あるので注意してくださいね。
さて、本題。 玄の和了りが他校との連携、アシストのおかげであるならば、「アシストされなかったらどうなってたんだ?」ということ オーラスのまさにクライマックスで、怜は「改変完了」と心の中でつぶやきました。 玄が照に直撃ロンをとる、という構図を作り上げるためには下準備があり それがなければ、当然、別の未来(おそらく怜が元々トリプルで見た本来の結果)があったはずです。 怜のアシスト、すなわち「改変完了」しなかったらどうなっていたのか? ざっくり言うと、4つのケースが考えられます。
まずケース1は違います。 終盤の怜の動きは、「ここで来るんか・・・」と驚いた上でのことです。 照には予想外で、怜にしても想定にない判断だからこそ驚いたわけで ドラ切りしない未来を見たのであれば、それは当たり前のことですから何の意外性もありません。 コラム2でも書きましたが、怜のおかげでドラが切れたわけではないということです。 ケース3も違います。 怜が自分で和了れるなら、当然自分の和了りを取ります。すばら先輩も同様でしょう。 あの局面で、和了れる可能性があったのは照と玄のみ。 だから照を止めるために、他家が連携したのだと周りにも受け止められたはずです。 これで、4つのケースのうち2つの可能性は消したので、あとは2か4です。 さて、どちらか? これは多分、アニメ版12話を見ないとわかりません。 漫画版だけだとおそらく無理だと思います。何故なら全員の手がどんな状態だったか把握できないからです。 照と玄は当然どちらでもリーチ段階の手までわかりますし、怜も途中経過なら読めます。 しかし、すばら先輩の手だけは、いくつか鳴いてさらした牌を除くと 途中経過はアニメでしか確認できません(配牌された段階と河を総合してある程度ならわかるのですが・・・) 玄の描写に関しては、漫画版の方が好きだとコラム2で書きましたが、 やはり対局中の描写についてはアニメの方がより丁寧なんですね。 おかげでこの記事にまとめることができます。 (とはいえ、漫画の方がわかりやすいところもあるので、やはり合わせて見てみるのがベストでしょうか。 麻雀の知識なんて、私には実は雀の涙ほどしかないのですが、一生懸命考えました。 どこかで間違ってないといいけど) ということで、まずはそれぞれの手をわかる範囲で。
さて、ドラ切りリーチの後の流れですが 玄のあとに番が回った照が引いたのは「八萬」 リーチしているので和了り牌以外は、そのまま切らないとしょうがないので、切って、これを怜がポン ここで怜が「改変完了」とつぶやいているので 改変しなかった場合は、ここでポンしなかったと考えるのが自然です。 ポンしなかった場合、玄の和了り牌「七萬」の行方はどこへ行くのか 怜のポンのあと、玄→照と進んで照が掴まされるわけですから、爆弾ポイントは照の2つ先 誰も鳴かないのであれば、照の2つ先は、すばら先輩→怜です。 ということは怜が振り込む? ・・・いいえ、和了り牌がわかっている怜がリーチをかけているわけでもないのに振り込むはずがありません。 それに「七萬」は「八萬」「九萬」を持っている怜の役に立たないこともありません。 照を止めるために、あえて振り込む?ありえません。玄の手は差し込むには高すぎるのです。 (この「高すぎる手」が玄に連携を意識させることをより難しくさせています。 連携するからには、差し込んだり差し込まれたり、持ちつ持たれつトントンなら意義もあると思いますが 自分に差し込んでくれる他家などいるわけないですから、玄にとって連携=一方的に差し込む状態になるからです) 捨てる理由ないです。 となると、これ1枚だけが和了り牌というわけではないので、諦めるのはまだ早いですが せっかくドラまで切ってリーチをかけたにもかかわらず、この段階では和了れないことにはなります。 玄にとって最悪のケースになってしまうのか・・・!? ・・・と、一見すると思ってしまうところなのですが(私も初見では思いました)、違います。 もう一度、先ほどの手牌を見てください。 怜がポンしなければ? ほぼ確実にすばら先輩が八萬をチーします。七萬・九萬を持っているのですから。 ケース3が違う理由で、「まだ怜もすばら先輩も和了れる状態ではない」と書きましたが まさにこれをチーすれば、すばら先輩はテンパイ(あと一枚で和了り)にできます。 八索を切ることで、九索×2をアタマに、白×3、二索×3、七・八・九萬、そして一・二萬 和了り牌は三萬。決して高い手ではないようですが、三萬は誰も持っていないし、河にも出ていません。 そして照・玄の和了り牌でもないので、この二人が引いてしまったら、必ず切らないといけません。 和了れる可能性は十分にあります。 それまでの対局で、すばら先輩が鳴く(ポンやチーをすること)のを ためらわないことは周知のことで、この局でも既に鳴いています。 前半戦で怜に差し込んでもらって照の連荘を止めたように 手をさらしまくって、あわよくばあの時のように、という思惑もありえます。 それに麻雀のルールではポンよりもチーの方が難易度が高く、 誰が切っても、自分が取れるなら取ってしまえるポンと違って チーは自分の直前に座っている上家(この時のすばら先輩の場合、照)が切った牌でしか取れません。 しかも、ポンとチーが同時に発生した場合、ポンの方が優先されてしまうと言うルールです。 なんでポンに比べてそこまで立場が悪いのかよくわかりませんが、そういうルールなので仕方ないです。 とにかく、照が八萬を切ってくれないことには、すばら先輩はチーできません。 まさにその照が切ってくれました。取らない理由は何もないです。
もう一度元の話に戻りまして、怜のポンがなければ、すばら先輩はほぼ間違いなく八萬をチーします。 するとどうなるか?山から牌をツモる順が一つずれます。 上の方で書いたのと繰り返しになりますが、実際には怜のポンの後、玄→照で直撃ロンでしたから 玄の和了り牌「七萬」はこの2つ後に出てきます。 すばら先輩の2つ後、すなわち怜→玄 和了り牌七萬は玄が自分で引きます。つまり改変されなければ玄のツモ和了りだったのです。
怜が「阿知賀の和了り牌」がわかったのは、怜が自分で掴んだからじゃないの?というのも違います。 前半戦で、照の和了りを止めようと思って、ポンしてずらしたけど、やっぱり和了られるという場面があります。 この時、怜は「ズラした上に当たり牌もわかっとる」と考えています。 この局で、怜が予見した照の和了りは、「宮永が次巡に親満ツモ」 照が自分で掴んだツモ和了りです。怜が振り込んだわけではありません。なのに和了り牌を知っています。 したがって、「怜は自分が引いた牌でなくても、他家の和了り牌を読み取れる」と言うことです。 そもそも怜が「リーチをかけていない限り、まず振り込むことはない」のは、相手の狙いを知っているからこそのことですからね。 ですから、このオーラスの局面でも、阿知賀の和了り牌を知っているのは何の不思議もありません。 よって私の結論としては、改変されなければ、ケース4「玄のツモ和了り」 それが怜の操作によって、「玄の照へのロン直撃」になったということです。
では、どのみち玄が和了ることで、照の連荘は止まり、先鋒戦も終了ということになります。 なんでわざわざ怜が改変する必要があったのか?純粋に点数の問題です。 ロン直撃なら、失点は照だけです。まず実際に生じた点数から改めて計算してみましょう。 玄の手はメンタンピン(メン=メンゼン(面前) ここではリーチのこと。 タン=タンヤオ(断幺) 一と九の数牌や、東西等の字牌が手に含まれてないこと。 ピン=ピンフ(平和) 4組のメンツ(※要するに3枚セット)が全て続き数字(シュンツ)であること 今回の玄の手の場合、アタマになっている二筒×2を除くと 三・四・五筒が2セット、それから三・四・五索。そして五・六・七萬) イーペーコー(一盃口。同じ連続数字の組み合わせがあること。この場合三・四・五筒がそれ) そしてドラ6(ドラ牌の三筒が2枚、赤五筒が2枚、赤五萬と赤五索が1枚ずつで、計ドラが6枚) メン・タン・ピンでそれぞれ1翻ずつ、計3翻。イーペーコーで1翻。そしてドラが6で6翻。 計10翻(半分以上ドラの加点ってところが、やはり玄のドラゴンロードの恐ろしさですね) 8〜10翻は倍満扱いですので、16000。 さらに2本場ですから300×2で600。これで16600 おまけにリーチをかけた照から取ったので、リーチ棒分+1000もとって、 玄の得点=照の失点は、計17600となりました。 一方、玄のツモ和了だとどうなっていたのか? 手は変わりませんが、リーチをかけて(つまり鳴かずに)ツモで和了ったわけですから メンゼンチンツモ(面前清自撰)が成立。もう一つ翻がプラスされます。したがって11翻です。 上記の通り、8〜10翻までは倍満で16000ですが、 11・12翻だと3倍満、24000+600(2本場)で24600になります。 改変されるより7000点も多い! ※あ・・・リーチ棒分忘れてた。こっちのケースでも+1000で25600ですね。 しかし、これは怜にとって非常にまずい。 何故なら、単純に3位の阿知賀がたくさん点を取ってくるだけでもまずいですが ツモ和了だと、ロンより加点される上に、玄の得点は照・怜・すばら先輩の3人から取ることになります。 親番の照が親かぶりとはいえ12200(+リーチ棒1000)。子の怜・すばら先輩が6200ずつ したがって、照の失点は直撃よりも下がるわ、玄の点数は上がるわ、自分は失点してしまうわということになります。 この計算で行くと、最終収支はこうなります。
改変しない理由、ないですね。 つまり、正確に言うと、怜は玄の和了りをアシストしたのではありません。 玄の和了りを予見したうえで、白糸台と阿知賀の点を減らし、自らの失点も防ぎ、照を止めるという 非常に頭脳的なプレイをしたのです。千里山のエース、最後の意地です。 雀力が本当は3軍と本人は思っていたようですが、そんなことはなく、 状況を最大限に活用した見事な判断と言うしかありません。 よって「怜がアシストをしたから、3位阿知賀との点差が詰まってこの後不利になるのでは?」 というのも違うと言えるわけですよ、はっきりと。怜は怜の最善を尽くしたのです。間違いなく。 さて、では怜のトリプルには何の意味があったのでしょう。 改変を締めくくったのは、「照の切った八萬をポンした」ことです。 ポンするためには、八萬を当然、その段階で2枚保持していなくてはなりません。 しかし、トリプル2回目前に既に八萬を2枚持っているので、もうクリアできているように見えます。 なんとも言えないところですが、ポイントは「九萬を持っている」と言うところかもしれません。 つまり、トリプルを使わなかった怜だと、 この後七・八・九萬の組み合わせを作ろうとして、八萬を一つ切ってしまったのではないかと。 見たところ、八萬が2枚ある以外は、シュンツ(連続数字)の組み合わせばかりなので、それを基準に手を作ろうとした。 そのため、八萬を2枚手元に残しておかず、ポンすべき場面でポンできなかった。 (ちなみに怜が八萬切っても、すばら先輩はチーできません。順番違うので) 三尋木プロが2回戦で言っていた「2巡先に裏目ってることもたまにある」ようなことが、まさにこの時に出てしまい 「阿知賀の和了り牌(七萬)」並びに「後々に八萬が2枚必要になる」ことは、とても1巡先だけではわからなかった。 トリプルによってさらに先を見たことで、ようやく握っておくことができた、といったところではなかったかと推測します。 ・・・色々と言ってきましたが、大元の連携うんぬんの話に戻りますと、 玄の立場からすると、別に連携によって和了らせてもらったわけではないのです。 むしろ連携が入ったことで、得点減らされています。 なのに「気づかなかったの?」と言われるのは、ちょっとあんまりだという気がします。 しかし、仕方ないところもあるでしょう。それまでを思えば、何とか和了っただけでもまず何よりです。 怜はトリプルで見た時に「いつもなら回避するところ」と回避も考慮には入れていたようなので 実際実行して達成できたかはともかく、初手のドラ切りリーチから防御することも ひょっとしたらありえたのかもしれません。(その場合、肝心の照が止められないので、選択肢から外したようですが) 最悪、焼き鳥が続いたかもしれない危険性を考えれば、十分としておくべきところなのでしょう。 ついでにあの状況下で、ただでさえ最後に和了っただけとか言われてしまう(それも理不尽)というのに 怜やすばら先輩からも点数もぎ取っていたら、きっとお茶の間からもっと怒られます。 知らんやんそんなのー!って言いたいところですが、 玄が1人和了るより、3人の力で照から取ったという構図の方がきっとよかったのでしょう。 (照さん的には気の毒な気もしますが、みんなの目標であるチャンピオンとは そんなあの手この手で立ち向かってくる相手を真っ向から迎え撃つ立場なのかもしれませんし、 それすらもほとんどコークスクリューでぶちぬいていく姿は、恐ろしくもありかっこよくもあり。 一方で、卓を離れると、後輩のためにお菓子を買って帰ったり、仲間を気遣ったりするギャップもまたよかったです) ただ、言ってあげたいのは、連携に気づいてようが気づいてなかろうが
さて、ここまでの話を踏まえますと この記事の一番最初に触れた、控室で阿知賀メンバーが玄に言った指摘、 照のリーチ後、(怜の牌を)すばら先輩がポンして、一発を飛ばしたという点はともかく、 ※少し追記 このすばら先輩のポンにしても、照の一発を飛ばしたという点は確かに非常に大きいのですが (さらに、次に玄が切った二索もポンして、照に次の牌を掴ませないようにしている) それだけではなく、ポンを繰り返すことによって、すばら先輩の手は確実に進んでいると言うこともちょっと触れておきたいと思います。 現にこの二つのポンで、一向聴(イーシャンテン。テンパイの一歩手前)になっています。 「宮永照の下家に座ってしまったものですから」と、とにかく鳴きまくって照の番を流すことに徹していた すばら先輩の努力は間違いなく誰もが認めるほどすばら!なんですが、 だからといって、この局で「私が捨て石になりますから、あとは皆さん頼みます」というほど、 勝負を捨てて、献身的になっていたわけではありません。 もしそうだとしたら、安牌が確定しているとはいえ、せっかく2枚ある、ポン材料になりうる一萬を一つ手放したりはしないと思うのです。 (河に一枚出てますが、もう一枚残ってます。というか怜が持っています。もちろんすばら先輩は知る由もないことですが) すばら先輩はすばら先輩なりに勝負をかけていた、それぞれが最善の手をうかがっていたんだと思いますよ。 玄がドラ切りリーチをした後、怜のおかげで和了ることができたという見方は 実は的を射てないことになります。 では、阿知賀メンバーは間違ったことを言ったのか? というとそういうわけでもないのです。 なんだかんだいっても、玄が、少なくとも怜とすばら先輩が時折見せた連携には立ち入れなかったのは事実ですし、 自分も加わるかどうかはともかく、他家の意図を汲みとれるようになれれば、さらに成長しうるのも確かです。 ちょっと聞かせるには痛くても、より力を伸ばすために気づいてほしいことは気づいてと言う。 暖かい言葉をかけてあげるのも仲間ですが、指摘すべきところを指摘できるのも仲間であるからこそです。 悲しくて涙が出ても、みんなの声を受け入れた。 「ヘコむなら前進みつつヘコめばいい」と自分を反面教師にしろとまで言ってくれた赤土先生に、 はいと頷いた玄を尊重してあげたいです。 そもそも、上で長〜いこと書き続けてきた、本当は連携とは違うという点は 映像だけでなく、モノローグなどでそれぞれの思惑を読み込んで考えた一読者(私)の視点です。 玄が自分の手しか見ていなかったのと同様に 阿知賀メンバーは、対局の映像しか見ていません。 千里山の泉も「園城寺先輩がアシストした」と思っていましたから、 映像で掴める範囲ではまったく妥当な見解だったのでしょう。 声にしなかった怜たちの意図を踏まえて、実現しなかったifまで頭に入れて 「いや本当はこうだったんだぞ!」というのもこれもまた無理な相談なのです。 また、今回のこれもあくまで一読者である私の視点であり、また違った視点から考える読者・視聴者の方もいらっしゃるでしょう。 今回の教訓:視点はそれぞれ違うんだよということですね。 以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。 関連記事:咲 阿知賀編その1〜憧・穏乃・玄と「阿知賀こども麻雀クラブ」の子どもたち〜 :咲 阿知賀編その2〜漫画版とアニメ版 2人の玄ちゃん〜 :咲 阿知賀編その4〜仮説・ドラにまつわる玄ちゃんの記憶〜 :咲 阿知賀編その5〜「話の都合」と言われればそれまで?のことを真面目に考えてみる〜 :咲 阿知賀編その6〜場面と台詞から類推してみると・・・〜 :咲 阿知賀編その7〜いろいろなところにある「きっかけ」〜 :咲 阿知賀編寄り道〜一ヶ月遅れの探訪レポート〜 :咲 阿知賀編スタンプラリー〜歩いてきました吉野山〜 :咲 阿知賀編その8〜近いようで遠い、「あの人」への距離〜 :咲 阿知賀編キャラクター紹介〜『阿知賀こども麻雀クラブ!』〜 :咲 阿知賀編ヒストリー〜年表(阿知賀女子学院のあゆみ)〜 |