『くろちゃん日和21~静かな春を前に~』 | ||||||||||
|
|
3月も終わり、暦は4月に。学校は春休みになりました。 でも木曜日はいつも通り、部室のお掃除をする日です。 なんとなんと、今日は和ちゃんも来てくれました!なんだかうれしいな。 掃除が終わったら、みんなでお昼ごはん!ふふふ~今日はがんばっちゃうよ~ |
玄「ということで、今日のお昼はみなさん、このお店です!」 桜子「おおー」パチパチ ひな「何がでるかな、何が出るかな」 和「何かの番組の始まりか何かですか」 綾「いつの間にか玄ちゃんが学生服から、お店の人の服に変わってるんだけど」 和「それで、今回の趣旨は?」 玄「いやーせっかくの春休みだし、みんな来てくれたし。楽しく会食でもしたいなーって」 綾「それはわかるんだけど、玄ちゃんがお店の格好になってるのはどうして?」 玄「まあ、正直に言うと みんなにごちそうしてあげたいところなんだけど、私のおこづかいではさすがにまかないきれないんだよね」 綾「あ…」 桜子「私たち、お昼代、家でもらってきてるよ?」 ひな「それなりに」 玄「だよね。でも多分、ここでお食事するにはちょっと足りないんじゃないかなーって。 いや、ここだってそんなに高いお店じゃないんだけど、 小学生のみんなの『それなり』だと、ね?」 綾「うーん」 玄「それで、ここのお店の人に前もって相談して、 ほんのちょっとの間だけど、お店のお手伝いをするからってことで、少しまけてもらったんだ」 桜子「じゃあ、玄ちゃんがお料理するの?」 ひな「確かに玄ちゃんのお料理はとっても美味」 玄「ううん、それは無理。お店の味ってものがあるし、そもそも衛生管理上、厨房に手を出すのは問題があるもん。 注文を聞いたり、できあがったお料理を運んだり片付けたり。そのあたりだね」 綾「それでも…な、なんか悪いな…」 和「私、多分この子たちより少しはお金持ってきてますよ?」 玄「女将さんも、『気にしなくていいのに』って言ってくれたんだけどねー。 でもまあ、甘えるばかりというわけにもいかないし、私自身の気分の問題だよ」 和「でも…」 玄「もうこれで話を成立させちゃってるから、みんなが心配する必要はないよ? せっかくだから、ここのお料理を楽しんでほしいな!おいしいよー」 綾「…じゃあ、玄ちゃん。ここのおすすめはなに?」 玄「そうだねーやっぱり葛うどんかな!」 和「葛うどん?」 玄「その名の通り、葛から作ったうどんだね。吉野葛はこの地域の名産だから。 これが料理の写真。普通のうどんとはまた違った食感が楽しめるよ」 綾「おいしそうだね」 和「頼んでも、大丈夫なんですか?」 玄「そうじゃなきゃ言わないよ~じゃあ、2名様葛うどんご注文!でいいかな?」 綾「うん」 和「お願いします」 ひな「山菜どんぶりってのもあるんだね~」 玄「これはこれは、なかなか渋いところをついてきましたね!」 ひな「えっへん。“山谷”ひなだからねー…なんちゃって。で、おいしい?」 玄「もちろん!山で取れた山菜にホカホカの卵をたっぷりかけて!スルスルッと食べられちゃうよ!」 ひな「ふむふむ、じゃあそれで!」 桜子「卵と言えば、オムライスなんかもあるんだなぁ」 玄「…実はお客さん、オムライスには特別サービスがありまして」 桜子「お?」 玄「言ってくれれば、ケチャップで好きな文字を入れることができるんですよ?」 桜子「ほほー、じゃあ玄ちゃん、私の名前入れて!」 玄「おまかせあれ!」 和「…慣れてますね、玄さん」 綾「旅館の娘さんだもんね。むしろ楽しそうなくらいで接客してるよね」 |
和「おいしい…」 綾「うん、すっごくツルツルしてる!」 ひな「どれどれ?」横からパクッ 和「あ」 ひな「うーん、こっちも美味ー」 綾「ちょっとー!」 玄「桜、子、ち、ゃ、ん…と。はいっ、できました♪」 桜子「やったー」 ひな「もう一口、もう一口♪」 綾「もう~、しょうがないなぁ~」 |
※和には「ラーメンを食べ慣れていない」といった感じの描写が咲本編の2巻にあるのですが 上記の通り、ここで食べているのは、ラーメンではなく葛うどんです。 そういえば阿知賀編2巻で穏乃が「ラーメン食べたい」と言っている場面がありますが 吉野山でラーメン食べられるところってあるのかなぁ |
和「ここ、いい眺めですね…」 玄「でしょう?向こうの山が一望できるんだよね。これからの季節は桜がきれいなんだ。 憧ちゃんちも『一目千本』と言って、たくさんの桜が見られるって有名だけど ここの景色もなかなかのなかなかだよ」 桜子「へー」 玄「夏は緑がきれいだし、秋も紅葉の季節なんか素敵なんだよ。 まあ、さすがに冬は『さむい…』ってお姉ちゃんも震えちゃうかもだけど」 和「お姉さん…ああ、この間のてるてる坊主の」 玄「うん、でもその頃はその頃で、室内であったか~いお料理を食べながら過ごすのもいいものだね。 みんなでテーブルを囲んで、ぐつぐつと煮込んだお鍋とかおうどんとか…」 桜子「…ゴクッ」 ひな「今ごはん食べたばかりなのに、おなかがすく…」 綾「私のうどんまで食べちゃったくせに。でも気持ちはわかる」 玄「でもやっぱり、華は桜、かな? あと一週間もすれば、ここもパーッと開いて、一面の花が見られると思うよ!」 和「一週間…」 桜子「おおー」 ひな「でも、その頃にはお客さんもいっぱいで大忙しなんじゃないかなー」 玄「だねー。なんといっても春は吉野山一番の書き入れ時だから。 『せっかくの桜なんだけど、私らは見るヒマがないんだよねー』なんて話もご近所でよく聞くかも」 桜子「そういや、しずちゃんも昔『この時期は家の手伝いで忙しい』って言ってたっけ」 ひな「おみやげ売ってるお店だったよね」 綾「というか、それを言うなら、玄ちゃんちの旅館だって、てんてこまいになってるんじゃ」 玄「うっ。た、確かに。 でも何とか時間は作るから、来週のこの時間も、みなさんどうぞお忘れなく!」 綾「ふふっ、何かの宣伝みたい」 ひな「でも楽しみー」 桜子「来週ならまだ春休みだし、あとは天気の問題だけだねっ」 玄「うんうん♪」 和「来週…」 和「……」 |
し、穏乃ちゃん、憧ちゃん… どうしよう… 和ちゃん…いなくなっちゃうよ…! |
|
|