『くろちゃん日和K〜転がるボールの行く先は〜』 | ||||||
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〜話の始まりは、和がまだ阿知賀にいた頃の、季節は春へと移り変わる3月のある日のこと〜 |
灼「いらっしゃいませ。…って、クロ?」 玄「灼ちゃん、こんにちはー」 桜子「こんにちはー」 ひな「ちはー三河屋でーす」 和「…なんですか?それ」 桜子「さあ、早速いいボールを探そー!」 ひな「おー」 和「2人とも、靴、靴」 綾「こんにちはー。玄ちゃん、ここの人と知り合いなの?」 玄「うん。子どもの頃からの幼なじみだよ」 綾「へー、そうなんだー」 |
ひな「右に投げたのにボールは左端!すごいよ!大カーブだよ!」 桜子「球速ないから三振は取れないけどね〜」 綾「ボウリングの球なんか打たないよ?」 桜子「せっかくピンを倒したのにー!足元で赤いランプがついてるよー!」 和「…ラインを踏まなければいいんですよ?」 桜子「そうだけどー!わかってるけどー!勢いがー!」 綾「またFI、またFI…スコアに○がつくのもうイヤ〜」 ひな「ご愁傷様です」 綾「縁起でもない!」 和「狙い通りに投げたはずなのですが…」 桜子「ピンとピンの間をすり抜けるように行っちゃったよ!」 ひな「ゲートボール?」 綾「ある意味すごいよね」 玄「み、みんな慣れてないんだから、うまくいかないのは仕方がないよ?」 桜子「そう言うくろちゃんだってーミス多いぞー」 ひな「ぞー」 玄「うっ、む〜??」 灼(…いや、初心者の割にはむしろよく投げてるよ。最初は投げてすぐガーター落ちも珍しくないもの) 灼(でも…なんか、もどかし…) 灼「しょうがな…」ふう 玄「あれ?灼ちゃん、一緒にやってくれるの?」 灼「今はお客さんもそんなに来てないしね。こっちも商売だし、これでボウリングが苦手だと思われても困る」 玄「うんうん!みんなー!こちらの鷺森灼ちゃんが!みんなにコーチをしてくれるってー!」 灼「私もそれほど上手なわけじゃないから、そんな大げさに言うほどのことでは…」 玄「さーみんな、鷺森先生にごあいさつだよー!」 灼「聞いてないし」 |
灼(『さぎもりボウリング教室』って…玄、どこからあんな幕見つけてきたのか…) 灼(確かにボウリング教室はあるけど。張り紙もしてあるし) 灼(でも、ほんのちょっと教えるだけなのに…オーバーにもほどがある…) 灼(私が教室だなんて…まるで『あの人』みたいじゃないか…) 灼(…)
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灼「部長…私が、部長か…」 灼「最初、名前を貸すだけって言ったんだけどな。あれよあれよという間にこんなことに」 灼「突然のお願いはメリット少ないって、わかってたけど…ホント、うまいことかつがされた…」はぁ 玄「部長!灼ちゃん、頼りにしてるよっ」 灼「私に言わせれば、宥さんはともかく、なんで玄が部長をしないのかって話だよ」 玄「でも灼ちゃん、すぐに乗ってくれたって、赤土さんが言ってたよ?」 灼「…ん、それは、さ、うん、まあ、ね…ああ、もう!」
玄「…」 灼「…」 灼「2年前はもっと初心者の子たちがいたからそんなに気に留めなかったけど…」 灼「改めて見ると…クロ、これはちょっとひど…」 玄「うっ!」 |
玄「で、でもストライクだよ?全部倒してる時だってあるんだよ?」 灼「なんで次のフレームで必ず外すの」 玄「ううっ」 晴絵「ストライクとかスペアとかって、次の回でもピンを倒してこそ価値があるもんなぁ」 灼「でないとただの10点」 晴絵「ストライク取っても、次がガタガタだから結局トータルで伸びないかー」 灼「スプリットでも何でも、毎回少なからず倒してる綾の方がまだマシ」 玄「うううっっ〜」 綾「あはははは…」 灼「クロ…インハイ終わったら、特訓ね」 玄「えー!?」
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灼「久しぶり…」 和「お久しぶりです…」 灼「まさかここで会うとは、ね。玄たちから和って名前は聞いてたけど、 写真見るまでそれが誰だかわかってなかった」 和「私は阿知賀女子がインターハイに出ていたこと自体、つい最近知りました」 灼「ふうん…じゃ、お互い様だ」 灼「穏乃がよく言ってるよ?和とまた遊ぶんだって。 まさか穏乃でも憧でも玄でもなく、私が対戦するとは思わなかったけど…これも何かの縁」 和「はい…」 灼「でも勝負は勝負。負けない」 和「はい…!」
灼「ねえ、玄」 玄「なに、灼ちゃん」 灼「振り返って考えたらさ、私たちって、ここに来るまで結構遠回りしてたよね」 玄「…うん。それは、そうかも」 灼「きっとさ、もっと簡単な方法とか、楽な道もあったよね」 玄「うん…それもそうだね」 玄「でもそんな回り道をしてきたからこそ、今の私たちがあるんじゃないかな?」 灼「そうかな?」 玄「うん、だからきっと、遠回りも、ムダじゃなかったんだよ」 灼「ん…だと、いいね」 玄「うん、きっとそうだよ!」 灼「でも帰ったら特訓はするから」 玄「えー!?」 灼「せっかくストライク取れる力はあるのに、それを生かせないのは惜しい」 玄「うー」 灼「がんばれ」 晴絵「ははは、せっかく教えてくれるって言うんだ。やってみればいいよ、玄」 灼「せっかくと言うことなら、ハルちゃんもやろう」 晴絵「私も!?」 灼「ボウリングは激しい動きがいらないから、子どもからお年寄りまで誰でもできるスポーツ。 親睦会でもよく使われる」 灼「ハルちゃんがどんな道に進むとしても、覚えておいて損はない」キラーン 晴絵「お、おう…?」 〜そして後日、阿知賀こども麻雀クラブならぬ『阿知賀鷺森ボウリング教室』が始まったとか何とか〜 |
灼(人に教えることで、気付くこともある。出会うこともある) 灼(そう思えば、子どもと戯れるのも…悪いことでもないかも) 灼(…ま、今さら…だけど、ね) |
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