『くろちゃん日和S〜ピンクマフラーのてるてる坊主〜』 | ||||||||
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〜話はまだ和がいた頃の、3月の終わりごろのこと〜 |
桜子「いやー、今日も遊んだねー」 ひな「ねー」 綾「もー、二人ともあっち行ったりこっち行ったり、いきなり追いかけっこを始めたり。無駄にタフだよね」 桜子「えっへん」 和「まるでどこかの誰かみたいです」 玄「あはは。でも、和ちゃん、昔よりずいぶん体力がついたよねー」 和「え?そう…ですか?」 玄「うん、はじめて出会った頃は、ちょっと走ったらすぐへろへろ〜な感じになっちゃってた気がするんだけど 正直驚いちゃった」 和「ま、まあ…」 和(…) 穏乃「おそいよ、和っ」 憧「ふだん運動してないんでしょーっ」 和「しっ、穏乃たちが…速すぎるんですよ… 走る必要もないところでなぜ突然ダッシュしますか…子供ですか」 穏乃「子供だよ!」 和(…) 玄「きっと私たちの知らないところで、体力つけてたんだねー」 和「この山を何度も登ったり下りたりしていたら、自然とこうなっただけですよ」 玄「そうかなー?普通に歩いているだけなら、そうはならないと思うけど」 和「…」 玄「きっと、和ちゃんのがんばりはムダじゃなかったと思うよ」 和「だと、いいんですけどね」 玄「そして、このおもちなものもその成果…!」わきわき 和「台無しです」 ひな「おや、あそこの店先に見えるのは…」 宥「あ、玄ちゃん、みんなもおかえり〜」 玄「おねーちゃん、ただいまー」 和「おねえ…さん?」 玄「こんな時間にどうしたの?…ああ、『あれ』を作るお手伝い?」 宥「うん、寒い間はなかなかはかどらなかったから… でも、今日はポカポカあたたかかったし、ちょっとがんばったんだ」 玄「だね〜来月には桜が咲いて、このあたりはお客さんがたくさん来るもの。 その時におみやげに持って帰ってもらったら、きっと喜んでもらえると思うよ」 宥「だといいなぁ」 和「あの方はどなたですか?」 ひな「松実宥さん!」 桜子「玄ちゃんの1コ上のお姉ちゃんだよ」 綾「でも、クラブには来てなかったし、私たちもそんなに詳しくはないんだけどね」 和(ああ…そういえば) 玄「新しい方ですね、初めまして!」 和「は…初めまして」 玄「むむっ!これはこれは」 玄「お若いのにうちのお姉ちゃんと同じかそれ以上のものをおもちで…おもち…」 晴絵「セクハラやめい」 和(『うちのお姉ちゃん』…なるほど、あの時言っていた、玄さんのお姉さんですか) 桜子「それにしても…」じり ひな「玄ちゃんが自慢するだけあって、素敵なものをおもち…」じり 和(あ、このパターン) 桜子・ひな「ゆうおねえちゃー!」だきっ 宥「こんにちは…って、ええ!?うわわ、何?」 和「…やっぱり誰も止めないんですね」 綾「えっ、いや…その、あの、ええっと」 玄「ふふっ、おしくらまんじゅうみたいだから、あったかくて、きっとお姉ちゃんも喜んでるよ」 宥「ふわわわわ〜っ」 和「そう、でしょうか?」 玄「うんうん、どっちかというと一緒にまざりたいくらいだよ。いや〜若いっていいよねぇ」 和「やっぱりそっちの立場ですか」 綾「二人とも、あんなに抱きついちゃって。 それにしても…はぁ…さすが玄ちゃんのお姉ちゃんだねぇ… 玄ちゃんだって十分立派なのに、自分は全然大したことないって思ってる感じなのって すぐそばにいる人がもっとすごいから…一体何をどうするとああやって胸にだけ脂肪がつくのか」 和「あなたはあなたで何をぼやいているんでしょうか」 玄「あ、そうだ。おねーちゃん、和ちゃんにあれを一つ、あげてもいいかな?」 宥「ふわわ〜?い、いいと思うよ〜好きなのもらってきて、わわ〜」 和「玄さん?…店の中に行ってしまいました」 綾「で、店から何か持ってきて…あ、戻ってきた」 玄「和ちゃん、せっかくだから、これをどうぞ!これ、おねーちゃんの手作りなんだ」 和「…てるてる坊主?」 |
和「マフラーしてるんですね、このてるてる坊主…」 綾「ああ、これ知ってる!うちにもあるよ。 そっかぁ、これ、玄ちゃんのお姉さんが作ってくれてたんだ」 玄「そうそう、おねーちゃん、お店のお飾り用にてるてる坊主を作った時に 『あったかくしようね』ってあまった生地でマフラーまで作っちゃって。 でもそれがこのお店に来るお客さんにも、かわいいって評判なんだよ」 綾「で、数を増やして配ってくれてるんだ。いつもマフラーしてるらしいもんね、宥お姉さん」 玄「そうなの。春夏秋冬、オールシーズンマフラーなんだ」 和(そう言えば、夏でもマフラーをしている上級生がいるって、前に学年で話題になったような… あれ、宥さんのことだったんですね) 和「あした、“元気”に、なあれ…」 綾「天気じゃないんだよね、これ」 玄「晴れの日も雨の日もあるけど、今日より明日はもっと元気になるように、もっと素敵になるように。 つらい時も寂しい時もあるけど、元気が出ますようにっていう、おまじないなんだ」 和(つらい時…寂しい時…) −進学とか…クラス替え…転校…みんな少しずつ別れていく… こんな気持ちになるのなら…はじめから……− −またいつか楽しいことがある、そう思えたからっ!− 和「そう…ですか。うん、そうですね」 和「じゃあ、これ、もらってもいいんですか?」 玄「もちろん!おねーちゃんがみんなに渡せるようにって作ったものだから、 むしろもらってくれた方が嬉しいよ」 和「では遠慮なく。ありがとうございます、宥お姉さ…」 桜子「ゆうちゃ、ゆうちゃ」 ひな「ゆうおねえちゃー!」 宥「ど、どういたし、まして、ふわっ、ふわわっ、ふわわわわわわわ〜〜〜っ」 和「…本当に大丈夫なんでしょうか?」 玄「あはははは」ぽやーん |
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