『くろちゃん日和33~憧れ~』

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ということで、1月30日の志崎綾ちゃんの誕生日に合わせた話でした。

作中にある通り、冬は受験シーズン。中学入試の多くは1月中旬ごろに行われるようです。
中高一貫のお嬢様校である阿知賀女子学院に入るためには当然受験しなければならないはずで、
これを想定して、漫画形式に入った29の冒頭は玄ちゃんに勉強を教えてもらう場面から開始しました。
「夏の間、時間のある時だけでいいから」というお願いだったのですけど
きっと玄ちゃんなら時間の許す限り、最後まで面倒を見てくるだろうなーと。

1月中旬に行われた試験の結果は、概ね数日~1週間くらいで出るようです。
おそらく綾ちゃんの誕生日である1月30日までにはおおよそのことがわかっているでしょう。
綾ちゃんの自分自身に対するプレゼント(+α)ということで、今回の話にしてみました。



そして、憧。彼女もまた高等部から加わるためには、同様に受験を経たはずです。
中高で同じ日にやるかな?とは思いましたが、生徒数の少ないという阿知賀なら
試験も中高一貫ということで同じ日だったとしても…おかしくないかな?と思って登場させてみました。
実は、このシリーズ33回目にして、憧が前面に出てきたのは今回が初めてです。
(もちろん描いたこと自体は何度かありますが、振り返ってみると全てそこには必ず穏乃もいましたし)
灼は⑫、宥姉⑳等で出ていますので、ようやく登場、みたいな感もあります。


今回触れてみたかったのは、実写版のテレビドラマ編でも一つのキーになっていた(と思う)
「憧はなぜ、阿知賀に行く、つまり晩成に行かないことを初瀬に言わなかったのか」ということですね。

要因として考えられるのは、やはり晩成が合格基準の偏差値70以上の難関校であったこと
簡単には合格できない、でも奈良で麻雀をしている学生なら、誰もが目指し憧れでもある。
この地域で一番強いと言われる阿太峯中学の部で、晩成のことが話題にのぼらないはずがない。
目指す子はきっと、お互いにがんばろうねと励ましあっていたことでしょう。
そんな中に、「あたしは行かないよ」とはなかなか言えることではないかと思います。


そして、もう一つ考えられるのは、晩成の入試がいつかということ。
晩成のモデルになっている学校は橿原市にある畝傍高校ではないかと聞いた覚えがありますが
公立高校である畝傍高校の試験日は、平成30年は3月10日、合格発表が3月16日だそうです。
中学校の卒業式はおおよそ、その3月10日~15日くらいのようなので
晩成(畝傍)の結果が出るころには、もう中学校を卒業していてもおかしくはありません。

だから、もし憧が晩成を目指す子たちの士気を気にして、ためらっていたのであれば
少なくとも中学在学中に、それを話すタイミングはほとんどなかったかもしれません。
ですから、初瀬に阿知賀に行くことを話せなかったのは…
最善かどうかはともかくとして、無理からぬことだったかもしれませんね。
昔、コラム7で書いたことですが、私のイメージするあこちゃーは
強気な一方で、結構いろいろ気にする心配性でもあるので。


そして、そういうふうにあれこれと思案にくれても、最終的には自分の進む道は自分で決める。
「まずひとり!ここにいる…っ!!」に代表されるように。


悩まないわけじゃない、ミスだってする。それでも目指したものに向かって駆けていく。
その結果、それまで過ごしてきた友と違う道を歩んでいくことになるのだとしても。
それが、自分の心に決めたことであったならば。

阿知賀こども麻雀クラブの子どもたちが感じてきた憧のかっこよさ。
それは人当たりの良さとか、はたまた姉の望さんの影響などもあると思いますが、
あるいは「近しいけれど、自分の手には届かない魅力」なんかもあったのかもしれませんね。
さながらそれは、かつての赤土さんを見つめる灼にも通じるものだったのではないかという気がします。




こういった綾ちゃんの阿知賀を見つめてきた気持ち、玄ちゃんたち先輩への思い。…あとついでにおもちへの願望(笑)
そして憧がこれまで目指してきたもの(晩成)、それを覆して阿知賀を選んだ決意、さらには彼女自身の名前。
これらをひっくるめて、今回のサブタイトルは「憧れ」としました。


サブタイトルはつける時しばしば悩むのですが、今回は多分、もうこれしかないですね。



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