『くろちゃん日和38〜最後の出会い〜』



私はまだ、この道を歩いている。
みんながつないでくれたこの道を。


だから、歩き続ける。行けるところまで。
戦ってきたみんなの分までなんて大それたことは言えないけれど、せめて恥じないように。
たとえ苦しい結果が待っていたとしても…最後まで前を向いて歩いていきたい。


そうすればきっと…どこかで、私を見てくれている人がいる。
そしていつか…私が歩いたこの道を、歩いてくれる子達が、あなたがいる。
だから…


…うん、大丈夫。


「がんばるよっ!!」



 




インターハイ決勝、先鋒戦
宮永照(白糸台高校)、辻垣内智葉(臨海女子高校)、片岡優希(清澄高校)、そして松実玄(阿知賀女子学院)
対局者である4人を中央に配置し、照・智葉・優希の傍らに彼女たちとかかわりの深い1人を、
そして3人のさらにその間に、共通して縁のある人を配置するという構図にしています。

この試合を通して、当人たち自身はもちろん、いろいろなところにつながり、縁があるんだ、ということですね。




 〜いくつかに分けて描いた絵をまとめたので、ここからはそれぞれのパートを紹介します〜



最前列中央に玄ちゃん
顔を上げ、これからの行方を見据えながら
牌を、ひいてはチャンスをつかむべく手を伸ばす、というポーズにしています。




中央左に優希。+1人はもちろん、優希の中学以来のパートナーであり、阿知賀とも縁のある和

阿知賀を応援する者としては、ただでさえ照・智葉がいる上に
乗った時の勢いが半端ない優希がいるなんて、厄介なことこの上ないのですが
(東場に強いことはわかっていましたが、まさか天和まで出すなんてねぇ)
優希がこれまで戦ってきた、めぐりあってきた人の気持ちを背負い、
思いを乗せて戦ってきたことは知ってるし、
それでいてなかなか良い結果にはつながらず、苦しい思いをしてきたことも知ってますので…

がんばれ、優希



智葉さん。周りが暴れまくっているあおりもあって、
前半戦の段階ではかなり厳しい戦いを強いられていましたね。
でもこのまま終わるはずもなし。
後半戦、どんな形で巻き返しを狙っていってくれるのか。
楽しさと怖さがないまぜになった感じで見ています。

+1人は、臨海のメンバーではやっぱりダヴァンでしょう。
唯一、去年から続けての選手であり、智葉と同学年であり、
かつて智葉の力量を侮り、真っ二つにされた経験があるという。
「臨海の皆さんに出会えてよかった」と、そう思える姿勢に彼女を変えてくれたのは、やはり智葉さんなのでしょうね。

なお、決勝で和と再戦する関係にあるので、優希の隣にいる和と対極となる位置に置いています。



玄ちゃんにとって2度目の対戦となるインターハイチャンピオン・照。
5位決定戦の途中で、期せずして咲と出会い、何も言えずに過ぎてしまった。
選手が一堂に会した時にも顔を合わせられなかった。
そういったところから、メンタル的な不安があるのか…?
…なんてことを試合開始直後の序盤はちょっと思ったのですが。
まったくそんなことはなかったですね!

照の試合を見るたび、これ他の学校の選手、西東京の人たちとか
どうやって戦ってきたの?と思うのですが
2年前の話だと、こと西東京予選に限って言えば、先輩(現プロ)の渡辺琉音さんの方が
成績が良かったという話もありましたし…
頂に近づくほど、プレッシャーがかかるほどに、かえって強さを増してくるタイプなのかもしれませんねぇ。
あー、でも、白糸台回想で部員全員トバし、総ノックダウンとかやってのけてましたっけ。
…すごいな。

+1人は、その回想の頃からの付き合いである、現白糸台部長の菫さん。
照を見続けてきたこともさることながら、照をはさんでその反対側に咲を配置しています。
(宮永咲― 照を助けてくれるのか、それとも―)
照を思う、その心境はいかに。



優希と照に共通して縁のある人。
これはもう、ここに咲を置かずしてどうするといいますか。
咲と照との間に、そして宮永家に何があったのか。

準決勝大将戦が終わった直後の
「お姉ちゃんのところの大将を叩き潰せば
私の心が伝わるかも」というあの咲のモノローグ
今もって考えてみても、やっぱり穏やかではない感じなのですが
咲をして、そう思わせるに至るだけの
何かが存在するのでしょうかね。

連載開始以来、実に10年以上伏せられてきた宮永姉妹の因縁
この決勝戦を通じて、解き明かされる日が来るのでしょうか。

 
こちらは智葉と照に縁のある人
こちらもこの人一択、昨年度個人戦2位、三箇牧の荒川憩さん。
阿知賀とも練習試合に付き合ってくれた縁がありますしね。

智葉さんが準決勝、決勝と試合を進めていくたびに
「そういや去年も1年生がいたなぁ」とか
「ここにいたら連続和了が一発で止まるんだが」とか
その存在をかなり認めている節があるのが面白いですね。

荒川さんが表紙になった12巻のカバーイラストには
照・智葉の2人も描かれているので
今後なんらかの理由で3人が集まる、なんてこともあるのかな?



 

赤土先生、宥姉、いつもの子たち、そして大人になった慕ちゃん
おのおのの場所、立場から先鋒戦へ赴いた玄ちゃんの姿を見つめています。

かつて、10年前に赤土さんが担った役割
そのうち「部長」としての責任は灼が引き継いでくれたわけですが
「全国ナンバーワンと相対する」ポジションについては、玄が引き受けることになったわけですね。
かつての自分は決勝へは進めなかった、挫折するほどの敗北を味わった。
10年の時を経て、どんな思いで、赤子の頃から知る子の成長の行く末を見届けようとしているのでしょうか。

赤土さんの対極には慕ちゃん
冒頭にも改めて書きましたが、「きっとどこかで、私を見てくれている人がいる」という
前回からの続きなので、ここはいてもらわないと!ということで。
実際のところ、咲本編の時間には、一体どこで、どう過ごしているんでしょうね。
現在シノハユではお母さんが失踪した当時の回想が描かれていますが、果たして再会することはできたのでしょうか。



最後に、背景にいる露子さん。
玄ちゃんが見据えるその先から、姿は見えなくても娘のことを見つめています。
赤土さん・慕ちゃんと合わせて、選手たちを各方面から見守る大人組による
トライアングルの形になっています。

前にも書いた気がしますが、
全国大会を目指してきたこの戦いは
玄ちゃんのドラへのこだわり、
ひいてはお母さんの思い出との戦いでもあると思うのですよね。

ドラにずいぶんと助けられた、一方で縛られもした序盤。
前に向かうために、「いったんお別れ」した準決勝。
…はたして決勝では?







ということで、『最後の出会い』でした。
最初仮タイトルをつけた時は、ストレートに『最後の戦い』だったのですが
直接戦う四人と、彼女たちに関わるつながりにも今回は触れてみたいなと思って
「戦い」じゃなくて「出会い」へとタイトルを変えました。
まあ、描いてる間は、ゲームでラスボスと戦ってる時の曲が
脳内を駆け巡ってましたけどね。ガンガンに(笑)

玄ちゃんにとって、公式戦の戦いは(少なくとも今年のインターハイでは)これが最後ですし、
戦いを通しての出会いも、これが最後となります。
阿知賀編連載開始からもうすぐ8年。
泣いても笑っても、本当にこれが最後となりました。
でも戦いは終わっても、その後に続くつながりが少しでも生まれてくれれば。
試合の結果として、やがて勝敗が分かれるのは必然ですが、
この行く末に、よりよい未来につながる何かを見出してくれればいいなぁと
そんなことを願いつつ、今後の展開を見届けていこうと思います。

それでは、今回はこの辺で。


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