キャラクター及び作品紹介のページ その11

コゼット
(登場作品 「世界名作劇場 レ・ミゼラブル 少女コゼット」)


現在進行中の作品なので、紹介は難しいですね。
原作つきですから、それを読めば今後の流れがわかるといえばそうなのですが、
必ずしも原作通りに流れるとは限りませんので・・・

とりあえず作品世界の舞台と、これまで(2007年3月末・12話終了の段階)の状況だけ
書いていきます。ただ記憶があやふやなところもありますので、間違っていたらすみません。





「レ・ミゼラブル」
フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーが1862年に完成させた作品です。
舞台は19世紀フランス。主にナポレオンがワーテルローで連合軍に敗れた1815年から
ジャン・ヴァルジャンが死去する1833年までを描いています。
ちなみに、話が進めばいずれ革命に絡む話も出てくるかと思いますが、
その時の革命とはルイ16世やマリー・アントワネットの存在などでも
有名なフランス革命(1789年)ではなく7月革命(1830年)のことを指します。



当時フランスを含め、ヨーロッパは激動の時代でした。
フランス革命を契機として絶対王政の時代が崩壊。
ジャコバンによる恐怖政治とその終焉、ナポレオンの台頭とそして没落。
王政か共和政か、それとも・・・
めまぐるしく動く時代の中でさまざまな政治思想が飛び交っていました。

一方経済的にも、イギリスで18世紀半ばから始まった産業革命がフランスにも波及。
機械化・工業化が進み、社会経済が急速な伸びを見せ始めるようになりました。
ジャン・ヴァルジャンことマドレーヌがモントルイユ・シュル・メールで黒ガラス工場を経営し、
成功を収めたのも、そのような産業の発達に裏打ちされたものだったのでしょう。
しかし、急速な変化は、往々にして歪みをもたらすものでもあり、
過酷な労働環境、都市のスラム化、労働者の社会的立場などが深刻な問題として
取りざたされるようになったのもこの頃からです。

政治的にも、経済的にも変化の激しい時代。よく言えば社会の変革期ともとれますが
裏返しでいえば、つまり安定性を欠くということでもあり、
当時を生きる人々にとっては大きな不安を抱えていた時期でもあったのです。
特にフランスの場合、ナポレオン戦争の敗戦国でもありましたから・・・


社会が不安定な時期というのは、当然治安もよいものではありませんから、
政治体制を主導する側としては、取締りの強化・厳罰化を以って報いることが常です。
たった一切れのパンを盗んだというだけで投獄され、
しかも何度も脱獄を試みたために、結果19年もの間徒刑囚の身になったジャン・ヴァルジャン。
さらに出獄後、誤解もあるのですが、少年の持つ銀貨を奪ったということで
「極悪人」呼ばわりされ、次に捕まれば終身刑は間違いないと言われています。

ジャン・ヴァルジャンに負い目がないわけではありません。
彼が盗みを働いたのは紛れもない事実です。
しかし、彼は誰かを意図して傷つけたことはありませんし、まして命を奪ったこともありません。
現代の感覚から言えば、終身刑どころか、執行猶予でおさまりそうな程度のものでしょう。
なぜ彼が極悪人とみなされ、周囲から白眼視されてしまうのか、わかりづらいかもしれません。
一言で言えば、「そういう時代だったから」?
それだけに、この作品は題名として「レ・ミゼラブル」とつけられているのでしょうか。
これは直訳すると「悲惨な人々」という意味で、日本では「ああ無情」というタイトルが定着しています。



さて、コゼットの方に話を移しましょう。
ファンティーヌの子として1815年(ワーテルローの戦いと同年)に生まれたコゼットですが
(ウィキペディアによると「コゼット」は愛称らしく、本名は「ユーフラジー」らしいのですが・・・
 実際どうだったかは、私自身はよく覚えていません。
 少なくともアニメでは、現時点で自他共に一貫して「コゼット」と呼ばれています)
父親はおらず(アニメでは亡くなったと話していますが、原作では失踪)、
母であるファンティーヌは自分が稼いで、彼女を養っていかなければなりません。
しかし、当時の社会において、それは簡単なことではありませんでした。
現代の日本でも、外で働く女性が一般的になったのは戦後のことですし、
育児・待遇などの問題は今でも社会問題として残っています。
ましてや、150年以上も前の時代では・・・ですね。

そんなわけで、子どもを連れて働くことはできず、
泣く泣く娘を預け、単身モントルイユ・シュル・メールへ赴く母ファンティーヌ。
しかも預けた相手が悪すぎました。モンフェルメイユで宿屋を営むテナルディエは
当時3歳にすぎなかったコゼットをこきつかう一方、
事あるごとに、事がなくても事を捏造して、養育費をせびり続け、
結局、娘を迎えに行くどころか、何もかもを失ったファンティーヌは病に倒れ伏してしまいます。
(ここに至るまでの過程で、原作だと髪を売ったり・・・とこれはアニメでもありましたが
 他にも歯を売ったり、ついには売春に走ったりと、輪をかけて悲惨な境遇に立つ描写があります。
 勿論このあたりはアニメでは取り上げがたい部分なので、カットされていますが
 歯を売っても体を売っても、それでもコゼットだけは決して売らないところに、母の意地を感じます)


そこへやってきたのが、当時モントルイユ・シュル・メールの市長だったマドレーヌ。
長年の投獄生活で荒んでいた心をミリエル司教の「銀の燭台」の慈悲で改め、
今は人々のために尽くそうと、かつての身分を隠して精力的に仕事に励んでいた彼は
ファンティーヌを保護し、モンフェルメイユで預けたままのコゼットを呼ぶことを約束しました。
自らテナルディエの元へ赴くことを決めたマドレーヌ。ところがそこへ思わぬアクシンデント。
自分が、「ジャン・ヴァルジャン」が捕まったというのです。
もちろん、それは別人。しかし、その男がジャン・ヴァルジャンとして捕まった以上、
投獄されればおそらくは終身刑を免れない・・・けれど、そうなれば、むしろ自分としては願ったりで
今後、ジャン・ヴァルジャンとして疑われることも罪に問われることもない。しかし・・・

悩んだ末に、彼は裁判の場へ赴き、自分こそが本物であることを証言してしまいます。
これは、自分のせいで他人に罪を背負わせることはできない、という改心した後の
ジャン・ヴァルジャンの高潔さを示すシーンですが、
一方で、当然、彼が「優しい市長」から「極悪人のレッテルを貼られた男」に逆戻りした場面でもあり、
そして、ファンティーヌとの約束を違えてしまった一日でもありました。
コゼットとの再会を病床から待ち望んでいたファンティーヌは、
ついに娘の顔を見ることなく、この世を去ってしまうことになるのです。

身分を失い、再び逃亡生活に身を落とすジャン・ヴァルジャン。
それでも彼は、亡くなったファンティーヌの無念を晴らすべく、死者との約束を果たすべく
今度こそモンフェルメイユに赴き、コゼットを引き取ることを決意したのでした。


1823年12月。3歳で母と別れたコゼットは8歳になっていました。
アニメでは弟分のガヴローシュや愛犬シュシュの存在があって、
まだ明るく前向きな要素が所々に出ていましたが、原作ではそんな味方との接点などなく
「歌わないひばり」と揶揄されるほどこきつかわれていた彼女。
アニメでも、ガヴローシュたちとの別れを強いられ、5年間待ち続けた母からの連絡が途絶え
仕送りも滞ったということで、テナルディエ一家からの風当たりが格段に厳しくなってきた頃。
それまでは何とか気丈に生きてきた彼女も、精神的に追い詰められてゆくようになりました。

クリスマスの夜、冬の森。真夜中に泉へ水汲みに行かされることになったコゼット。
いつも通ってきた道。でも今は傍にガヴローシュがいない。
街灯などあるはずもなく、暗く寒い道を一人裸足で、重い桶を引きずりながらフラフラと歩く。
何度も転び、せっかく汲んだ水で体を濡らしてしまい、どうしようもない不安にかられて
泣き出してしまうコゼット。そんな彼女の前に現れたのは・・・



・・・というところまでが今の話へとつながる流れですかね。
うーん、ここまででも呆れるほどに長くなったなぁ。
続きは次回予告よろしく、「(アニメあるいは原作を)見てくだされ」ということで。

なお、コゼットの声を担当しているのは名塚佳織さん。また、OPテーマ「風の向こう」と
EDテーマ「ma maman(私のお母さん)」を歌っているのは斉藤由貴さん。
この人の名前を聞くと、一昔前の「夢の中へ」を思い出すのですが、
ミュージカル版「レ・ミゼラブル」の初代コゼット役を務めていたことがあるのだそうです。
お母さんへの思いを歌ったいい曲ですよ。
・・・しかし、そのお母さんが既に作中で亡くなってしまったのですが、今後どうするのかな。
個人的には後々までこの曲でいってほしい気がしますが・・・